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野生動物医学会(9/30)講演要旨

        環境災害による生態系被害に対するNRDAアジアの取り組み
-海鳥を指標とする Natural Resource Damage Assessment と放射線被曝モニタリング-

植松一良、渡辺浩幸、山本英恵、森千恵子、植松明香(NRDAアジア)
キャラハン・バーバラ(IBRRC)、グリーン・ディック(IFAW)

はじめに、

 災害が及ぼす影響は多岐にわたるため、短期的に混乱を招くことは避けられません。その混乱を最小限にするためには、危機管理(リスクマネージメント)の能力を事前に高めておく必要があります。その際に重要なことは、どんな危機に対する何を対象とするマネージメントなのかを明確しておくことだと思います。
 私たちが取り組んでいるのは、環境災害による生態系保全活動です。環境災害という言葉にはまだ明確な定義は存在していませんが、NRDAアジアは人間活動により引き起こされた自然環境破壊に限定したいと考えています。その具体的事業を下記に示します。

・アジアで発生した油汚染事故時のNRDAコンサルティング事業
・大規模油汚染事故海鳥救護活動への人員派遣と後方支援
・海岸漂着ごみ問題解決のためのエコツーリズム支援事業
・原子力発電所事故に伴う野生生物被爆実態モニタリング事業
・アジア周辺海域で繁殖する稀少な海鳥の調査・保護事業


油汚染事故(Oill Spill)における国際ネットワーク

 1989年に発生したエクソン・バルディーズ号オイル・スピル以降海洋油汚染は海洋生物の大量死を引き起こすこと、人間の社会資本保護を目的とした回収作業の方法によっては、海洋生態系の多様性を半永久的に損なうことが知られるようになりました。このオイル・スピルを契機にアメリカ議会は原因者に無限責任を義務づける法律を制定して、国際社会をリードすることになります。具体的には国際動物福祉基金(IFAW)と国際鳥類救護研究センター(IBRRC)による世界中を対象とした一連の救護活動の実施です。
 1999年フランスで起きたエリカ号オイル・スピル以降、ヨーロッパで相次いで大規模なタンカー事故が発生。その教訓から、2000年オランダに事務局を置くシー・アラーム(Sea Alarm)が設立されました。現在はシー・アラームがIBRRCと協力して、国際ネットワークの事務局を担っています。日本の窓口はNRDAアジア(本年3月まで日本環境災害情報センター)です。

原子力発電所事故に伴う放射線汚染

 6ヶ月前の3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う福島原発事故は、人類が一番最近引き起こした大規模な環境災害です。NRDAアジアは震災発生直後の3月20日から現地に入って活動してきました。オイル・スピル対応で長年共に活動してきたIFAWのエマージェンシー・チーム(ERT)が3月27日に合流。現地調査の結果、被曝動物の救護と徐染、モニタリングの国際基準の提唱を企画。5月1、2日東京に日米の専門家が集まって、提言をまとめました。現在その提言に沿って、海鳥を対象に海洋汚染のモニタリングを実施中です。